院長あいさつ

当院における再生医療開始にあたって

R3.10.1.医療法人術徳会 理事長 井㞍幸成

令和3年10月より霧島整形外科クリニックでは運動器疾患に対する再生医療を開始いたします。

再生医療とはご自身の血液・脂肪などから得られた治癒を促進する成分(血小板・血漿・幹細胞など)を患部に投与することによって、自己治癒能力を高め、組織の修復と再生を促す治療です。ご自身の組織を使うため、アレルギー反応や副作用が少なく、安全性が高い治療です。

当院では、

  • 変形性関節症(膝・肩)に対する治療
  • スポーツ障害に対する治療

として、専門的な治療を行います。疾患や外傷に対する医学的知識・理解を共有できるように情報提供いたします。また、個別リハビリテーションや日常生活でのアドバイスも情報共有しながら行っていきます。
治療は完全予約制で行います。再生医療の担当医は、井㞍幸成医師、田邊 史医師、山畑仁志医師です。また、非常勤の谷口 昇教授、海江田英泰医師には肩関節について、福田秀明医師、上薗 直弘医師には膝関節・スポーツ障害についてご協力をいただく予定です。

現在のところ、再生医療には保険診療は認められておらず、自由診療(自費)となります。悪しからずご了承ください。

当院における再生医療の特徴

1.変形性関節症(加齢性の変形)に対して

変形性関節症は比較的高齢の方に多く見られ、関節の痛み、歩行障害などをきたします。その原因は不明ですが、軟骨の変性、靭帯や関節包などの拘縮、筋力の低下などが生じます。治療としては、消炎鎮痛、筋力増強訓練、ヒアルロン酸注入などの保存的治療、骨切り術・人工関節置換術などの手術療法が選択されます。当院では以下のような考え方で治療を進めてまいります。

軟骨の変性がいったん生じると治る(完全な修復)ことはほとんどありません。関節軟骨は硝子軟骨といわれる非常につるつるとした摩擦抵抗の極めて低いクッションですが、これが繊維軟骨という若干劣った軟骨に置き換わります。このままで特に問題なく過ごされる方も少なくありませんが、一部の方は軟骨の破壊が進み、関節の動きが制限され、筋力が低下し、骨の変形も生じます。これが変形性関節症です(図1)。

軟骨の変性は40歳ごろから起こり、症状の出現と軽快を繰り返しながら徐々に進行します。まず、痛みが出現し、変形、歩行障害へと悪化します。この進行パターンには個人差があります(図2)。

変形性関節症の治療は、患者さんが病院に来てから始まります。すなわち、痛みが出てからです。50歳前後から関節痛が出現する人が現れ(初期)、徐々に痛みが進みます。60歳代になると変形が進行し(中期)、70歳代になると起立歩行が困難になります(末期)(図3)。

初期には鎮痛剤の内服や、ヒアルロン酸の関節注入が行われます。筋力増強などの運動療法が有効との科学的論文があります。そのため、運動療法を主としたリハビリテーションが推奨されていますが、実際にはこの年代の患者さんは仕事などが忙しく、十分なリハビリテーションがなされていないと思います。
病気が中期に進行すると骨切りなどの手術が進められることがあります。ヒアルロン酸注入は引き続きよくされている治療ですが、変性の進行した軟骨に対する治療効果については賛否両論があります。
さらに病気が進むと、末期的状態になり人工関節手術が唯一の除痛、機能回復の手段となります。人工関節手術によりかなりの痛みが取れますが、可動域や筋力を改善するものではありません。また、人工の手術を避けて生きていきたいと思う人々には解決策を提供できません。

このような現状の中で、再生医療を行うことに厚生労働省から許可が出ました。再生医療は自分の組織を用いて修復を図るもので、多くの可能性を秘めています。しかし、継続的な効果に対しては懐疑的な意見も少なくありません。前述のように、数年単位で進行する加齢減少をストップさせることは容易でありません。

現在許されている関節の再生医療は、脂肪由来幹細胞移植、血小板、血清由来タンパクの注入方法です。

2.スポーツ障害に対する再生医療について

国分隼人地区はスポーツの盛んな地域です。学校や企業も多く、子供から大人まで様々な競技を愉しまれています。一方で、ケガや障害も少なくありません。当院に受診される多くの部活生や実業団選手はリハビリテーションと投薬で加療されてきました。最近皆さんがよく聞かれることも多くなったと思いますが、米国の大リーガーや本邦の有名一流選手がこの治療法を選択されています。今後我が国の一般的な選手にも広がっていくと思われます。
現在その有効性が証明されているのは、肘の外上顆炎(テニス肘)と野球肘(内側型)です。議論が分かれるものとしては、腱板損傷、膝蓋腱炎、アキレス腱炎、膝手術後(前十字靭帯、半月板等)、肉離れなどです。今後これらのスポーツ障害に対し、様々な新しい治療法が開発されてくると思います。
当院では、従来のスポーツ障害治療のエキスパートの専門医に治療を行ってもらおうと予定しています。

当院ではオーダーメイド リハビリテーションを並行して行うことで再生医療の効果を最大限に引き出そうと考えています。

疾患の医学的理解、患者さんの現在の状態と今後の予測、それに伴う個別リハビリテーションプログラムの提供を行います。また、ご希望に応じて月単位の定期検診を行い、その間の運動量や体調の管理を双方向的に情報共有する形で行いたいと考えています。具体的には、毎日の運動量や種類、体重や筋力筋量のモニタリングを携帯端末で病院に送っていただくシステムを導入し、当方で解析してその結果を定期的にアドバイスします。

当院で行う再生医療については、詳しくはこのホームページに記載する予定です。一度ご覧いただき、ご興味のある方にはぜひお問い合わせいただければ幸いです。