Performance & Conditioning Laboratory

2017 笑顔つなぐ えひめ国体帯同報告

第72回目を迎える国民体育大会が、愛媛県で行われた。9月30日から10月10日まで各地で熱戦が繰り広げられた。10月28日からは、第17回目の全国障害者スポーツ大会も開催される。今治市は、自転車競技の盛んな街で、大会も多く開かれている。市を挙げて環境面の整備にあたり、レンタルサイクルも充実している。連日しまなみ海道の絶景を目当てに、ツーリングを楽しむ観光客が後を絶たなかった。今治市での国体競技は、バスケットボール・アーチェリー・自転車(ロード)・ボート・軟式野球・ソフトテニスが開催され、各地でのぼりの旗を多く見受けられた。

ボート競技は、玉川湖ボートコースで開催された。四国は、例年水不足に悩まされ大会自体も距離の変更を余儀なくされていたが、大会前の大雨により1000mでの競技開催が可能となった。7月に行われた九州大会を勝ち抜いた少年男子シングルスカルと舵手付きクォドプル、成年女子シングルスカルと男子ダブルスカルが出場した。

移動は、マイクロバスで12時間。交代で運転し、途中休憩を挟むが身体的な負担は大きい。成長の未熟な高校生は、気持ちのコントロールが難しく、途中雨漏りのアクシデントもあり心理的な負担も大きかった。大会中の私の役割は、体調管理、食事管理、身体のコンディショニングである。あらかじめ宿泊所周辺の医療施設をリサーチし怪我や病気に対応する。頭痛薬や鎮痛薬は特に気を遣う。一般の薬局で入手可能な薬の多くは、うっかりドーピングの危険性があるため、アンチドーピング機構に確認し相談に応じるようにしている。大会期間中は、二日間豪雨の中でのレースとなった。調整内容は、強化部で検討していく。私は、トレーナーとして体調面での状態、食事面での状態、睡眠の状態、身体機能面の状態を提示し、負荷の量や質の検討、疲労の回復やリラクセーションとリカバリー、イメージトレーニング等組み合わせていく。本大会期間中は、大きな故障もなく、日に日に調子を上げていく選手が多く、「身体の軽さ」を感じる声が聞かれることもあった。

ボート競技に携わって6年。未経験競技への理解は難渋を極めたが、身体機能面では、ようやく自分なりの答えが見いだせてきた。県強化部としては、これまでの経験から学んだことを生かし、確実に鹿児島のレベルは向上している。しかし6年前の全国7位という結果以降決勝進出できていないのも現状である。

昨年の台風以降拠点の大隅湖は、練習環境が激変した。周辺の山々は多くの土砂崩れに見舞われ、その多くの大木が大隅湖へ流れ、流木となっている。船は一度流木に衝突すると、破損してしまう。そのため練習に行く度に流木拾いから練習が開始され、実質練習時間は縮小を強いられている。結果、鹿児島国体本会場も輝北ダムへの変更を余儀なくされた。

今回の本国体は、結果的に1秒差で決勝トーナメントに上がれないという僅差の戦いもあった。結局戦うのは選手たちであり、我々強化スタッフは、選手たちが最高の状態でスタートラインに立てるようハード面やソフト面の充実を図ることに尽きる。私のメディカルスタッフという立場は、年間を通じて関係を築いていく。追い込まれた状況で最後にかける言葉は、まだ見つかっていない。だからこそ、これからも選手たちの頑張っている姿に元気をもらい、私なりの還元を追及していきたいと考えている。少しでも多くの選手を支援できる体制作りや仲間を増やし、鹿児島国体に向けての体制づくりに厚みを持たせていきたい。(橘木)